経費の計上は会社の利益に関係するため、特に税務調査では、間違って経費が計上されていないか、それにより利益が少なくなっていないかなどが、よくチェックされるところです。なかでも前払費用は特に間違えやすい点なので注意しましょう。
費用の計上は支払うべき金額(債務)が確定してから計上する
法人が支払う費用や損失などを、法人税法では「損金」といいます。法人が所得を計算する上で、損金に算入できる金額は、次のものです。
・その事業年度の売上原価や完成工事原価、その他これらに準ずる原価
・販売費や一般管理費、その他の費用(ただし、償却費以外で事業年度内に債務が確定しないものは除く)など
つまり販売費等で*事業年度末までに債務が確定していない費用については、その事業年度の損金に算入してはならないことになっています。したがって、その期に発生したものはどれも損金に算入できるとは限らないのです。ただし、短期前払費用については、一定の要件の下、支払った時点での損金算入が認められますが、その要件に満たしていないと税務調査に否認されることのなります。
短期前払費用の損金算入が認められるケース・認められないケース
法人税では、前払費用とは、一定の契約により継続的にサービス(役務)の提供を受けるために支出した費用で、その事業年度終了時においてまだ提供を受けていないサービスに対するものをいいます。原則的にはサービスの提供を受けたときに損金に算入します。短期前払費用とは、前記の前払費用のうち、支払った日から1年以内に提供を受けるサービスに係る費用をいいます。そして、それを支払った場合、その支払った金額を継続してその事業年度の損金に算入しているときは、支払時点で損金に算入することが認められます。ただし、借入金を預金等に運用する時のその借入金にかかる支払利子のとように、収益の計上をと対応させる必要があるもものについては現金算入は認められません
「契約により、次のような支払を計測的に行うこととしている法人(3月決算)の場合」
損金算入が認められる例
・期間40年の土地賃借にかかる賃料について、毎月月末に翌月分の時代月額100万円を払う
・期間4年のシステム装置のリース料について、12ヶ月分の24万円を3月下旬に支払う
損金算入が認められない例
・期間10年の建物賃借にかかる賃料について、毎年、家賃年間(4月から翌年3月)の120万円を2月に前払いする。
実際に短期前払費用の損金算入を否認された例をケーススタディとして見てみましょう。
ケース:短期の損害保険料を分割で支払った
9月決算のA社は、当期の9月20日に、保険期間が登記9月20日~翌年9月19日までの1年間の保険料は300万円で10回の分割払いとし、保険を契約した日(9月20日)に1回分の30万円を支払いました。
経理担当者は、その契約が成立し債務が確定しているので短期前払費用に該当すると判断して、当期に3万円金額を損金経理しました。後日、税務調査が入り、未払いの270万円は損金に算入できないと指摘がありました。理由は以下の通りです。
・損害保険契約においては、契約を結んだだけでは債務が確定したとはならず、保険期間の経過にしたがって債務が確定すること
・短期前払費用について法人税では、未払いのうち、まだサービスの提供を受けていない部分の金額までは損金算入を認めていないことA社はこの指摘に従い、修正申告を行うことになりました。